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施策の組み合わせ方——一本足打法をやめる
母集団形成を一つの施策だけに頼っていると、その施策が振るわなかった年に打つ手がなくなります。かといって、数を増やせばよいわけでもありません。大切なのは、施策ごとに役割を決めて組み合わせることです。本記事では、量を稼ぐ・質を担保する・関係を深めるという三つの役割分担と、増やしすぎたときに起きる弊害について、実務の視点で整理します。
一つの施策に頼ると、何が起きるか
打ち合わせで採用担当者の話をうかがうと、「昨年までは同じやり方で足りていたのに、今年は急に集まらなくなった」という声を聞くことがあります。学生の動き方は年によって変わりますし、同じ施策を使う企業が増えれば、埋もれやすさも変わります。一つの施策に依存していると、その変化がそのまま母集団の増減として跳ね返ってきます。
もう一つの問題は、判断材料が持てないことです。使っている施策が一つだけだと、成果が振るわないときに、施策が合っていないのか、伝え方に課題があるのかを切り分けられません。比較できる相手があってはじめて、原因の見当がつけやすくなります。特定の手法への依存は、コストの面でも交渉の余地を狭めます。
組み合わせの前に、施策の「役割」を決める
複数の施策を使うこと自体が目的ではありません。組み合わせが機能するのは、施策ごとに担う役割が違うときです。似た性格の施策を並べても、手間が増えるだけで補い合いにはなりません。
役割の分け方はいくつかありますが、実務で使いやすいのは、量を稼ぐ・質を担保する・関係を深めるという三分類です。それぞれに求めるものが違うため、評価の仕方も変わります。量を担う施策に出会いの深さを求めても噛み合いませんし、関係を深める施策に人数を求めても筋が違います。役割を先に決めておくと、成果の見方がぶれなくなります。それぞれの手法がどの役割に向くかは、採用チャネルの選び方の整理も参考にしてみてください。
役割1:量を稼ぐ——間口を広げ、母集団の土台をつくる
一つ目の役割は、接点の総数を確保することです。就職情報サイトへの掲載のように、多くの学生が集まる場に情報を出す施策が中心になります。自社を知らなかった層に見つけてもらえるのが持ち味です。
この役割の施策で見るべきは、人数と、そこから次の段階へ進んだ割合です。ただし、多くの企業が同じ場に並ぶため、掲載しただけでは埋もれます。求人情報や採用ページの書き方をどれだけ具体的にできるかで、届き方が変わります。量を担う施策は、それ単体では相互理解が浅くなりやすいので、次に挙げる役割で補うことが前提になります。
役割2:質を担保する——会いたい層に、狙って近づく
二つ目は、求める人物像に近い層と確実に出会う役割です。企業から個別に声をかけるスカウト型サービスや、少人数で直接向き合うイベント型が、この役割を担いやすい施策です。総数は多くなりませんが、一人ひとりとの接点が濃くなります。
この役割の施策は、人数で評価しないことが大切です。見るべきは、会った学生が求める人物像とどれだけ重なっていたか、そして選考にどれだけ進んだかです。手間はかかりますが、その手間が精度に変わるのがこの役割の性格です。量を担う施策で母集団の土台をつくりつつ、狙いの層にはこちらから近づく。この二段構えが、組み合わせの基本形になります。
役割3:関係を深める——一度きりで終わらせない
三つ目は、出会った学生との関係を続ける役割です。説明会や面談で接点を持った学生、選考の途中で縁がなかった学生、内定を辞退した学生。こうした人たちとのつながりは、その年で終わらせる必要はありません。
この役割は、新しい母集団を生むというより、すでに接点のある層を資産に変える働きをします。定期的な情報提供や、負担にならない範囲での近況のやり取りが中心です。すぐに数字として現れにくいため後回しにされがちですが、翌年以降の採用を支える土台になります。進め方はタレントプールの育て方にまとめています。三つの役割のうち、最も見落とされやすいのがここです。
増やしすぎの弊害——手が回らない組み合わせは、機能しない
役割分担が大切だと分かると、今度は施策を増やしたくなります。しかし、ここに落とし穴があります。施策の数だけ、運用の手間と管理の負荷が増えるからです。
多くの施策を並行させると、一つひとつへの対応が浅くなります。届いた応募への返信が遅れる、イベントの事前準備が間に合わない、記録が残らず翌年の判断材料にならない。結果として、どの施策も中途半端になります。特に採用担当者が兼務している体制では、この崩れ方が起きやすくなります。役割ごとに一つずつ、合計三つ程度から始め、無理なく回せることを確かめてから広げるのが現実的です。数より、やり切れるかどうかを基準にしてみてください。
組み合わせは、毎年見直す前提で組む
組み合わせに正解はなく、自社の状況が変われば最適な形も変わります。採用したい人数が増えれば量を担う施策の比重が上がりますし、求める人物像が明確になれば質を担う施策に寄せたほうが効率的です。担当者の人数が変われば、回せる施策の数も変わります。
年度が終わったら、施策ごとに役割を果たせていたかを振り返ってみてください。量を期待した施策が量を生んでいたか、質を期待した施策で会いたい層に会えていたか。役割の視点で見ると、「やめる」「続ける」「比重を変える」の判断がしやすくなります。すべてを入れ替える必要はなく、一つずつ調整していく形で十分です。
よくある質問
Q1. 施策はいくつくらいから始めるのが現実的ですか?
A. 役割ごとに一つずつ、三つ程度が扱いやすい出発点です。ただし、担当者が兼務で時間が限られているなら、まずは量と質の二つから始めても構いません。数を増やすより、それぞれをやり切れる状態を保つほうが結果につながりやすくなります。
Q2. どの施策がどの役割に向くか、判断がつきません。
A. 一度に多くの人に届くのか、一人ひとりに手をかけるのかで、大きく分かれます。前者は量、後者は質を担いやすい性格です。判断に迷う場合は、小さい規模で試して、実際に会えた学生の層を確かめるのが確実です。
Q3. 成果の出ない施策は、すぐにやめるべきですか?
A. 期待していた役割を果たせていないのか、それとも役割の設定自体がずれていたのかを分けて見てみてください。関係を深める役割の施策は、その年の数字には現れにくい性格があります。役割に照らして評価してから判断することをおすすめします。
まとめ
- 一つの施策に頼ると、環境が変わった年に打ち手がなくなる
- 組み合わせが機能するのは、施策ごとに役割が違うとき
- 量を稼ぐ・質を担保する・関係を深める、の三つで役割を分ける
- 役割ごとに評価の物差しを変える(量の施策に深さを求めない)
- 施策を増やしすぎると運用が浅くなり、どれも中途半端になる
- 組み合わせは毎年見直し、比重を少しずつ調整していく
一本足打法をやめるとは、たくさん手を出すことではなく、役割の違う施策を意図をもって組み合わせることです。私たちルビーインも、逆求人型イベント『ウェルハンティング』で、企業と学生が1対1で深く向き合う場を通じて、質を担保する役割と関係を深める役割の両面から採用活動に伴走しています。まずは今使っている施策を、三つの役割のどれを担っているかで分類してみてください。抜けている役割が見えてきます。
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