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志望動機の深掘りは何を聞くか——用意された答えの先を引き出す問い方
面接で志望動機を深掘りしたはずなのに、あとから振り返ると何も分からなかった。そんな手応えのなさは、聞き方の問題であることが少なくありません。学生の側は、想定される問いにひと通り答えを用意して面接に臨みます。その用意の内側をなぞるだけの問いを重ねても、出てくるのは準備された言葉です。この記事では、志望動機の深掘りで用意された答えの先に届く問い方と、詰問にならないための線引きを、私たちルビーインが学生との面談で見てきたことをもとに整理します。なお、学生時代の経験そのものを掘る聞き方は「ガクチカ」の深さを掘る聞き方——何をしたかより、なぜ・どう向き合ったかで扱っているため、本記事は志望動機に絞ります。
志望動機の深掘りが空振りするのは、答えが用意されているから
まず前提として、学生が志望動機を用意してくること自体は、悪いことではありません。準備をして臨むのは誠実さの表れでもあります。問題は、面接官の問いがその準備の範囲に収まってしまうことです。
面談の現場では、志望動機に苦戦している学生の声を数多く聞きます。「深掘りされるとつまずく」「なぜこの会社なのかにうまく答えられない」「そもそも志望動機を作るのが苦手」といった相談は、時期を問わず途切れません。裏を返せば、多くの学生は「深掘りされる」ことを前提に準備をしており、想定内の問いには答えを持っています。
企業側にも、鏡写しの悩みがあります。打ち合わせでは、志望動機がしっかりしていない学生だと自社でなくてもいいのではと感じてしまう、志望動機の弱さが不合格の理由として多い、という趣旨の話を複数うかがいます。つまり多くの現場で、志望動機は合否を分ける材料になっている。それだけに、聞き方の設計は評価の質に直結します。
まず分ける——「業界の理由」「会社の理由」「職種の理由」
深掘りが空回りする典型が、三つの理由が混ざったまま話が進むケースです。学生の語る志望動機には、業界を選んだ理由、その会社を選んだ理由、その職種を選んだ理由が、ひとつづきの物語として入り込んでいます。
面談で学生の話を整理していると、この分離ができていないことが本当に多いと感じます。「人の役に立ちたい」という思いは業界選びの理由になりますが、その会社を選ぶ理由にはなりません。「若いうちから裁量がある」は会社の理由になりますが、業界の理由ではありません。混ざったまま話されると、聞く側には「どこにでも当てはまりそうな話」に聞こえます。
面接官ができるのは、掘る前に切り分けることです。「いまのお話は、業界を選んだ理由と、当社を選んだ理由と、どちらに近いですか」と一度確認するだけで、そのあとの深掘りが噛み合います。切り分けた時点で、本人が考えていなかった部分がどこかも見えてきます。
用意された答えの先を聞く、三つの問い方
準備の内側をなぞらないために有効なのは、次の三つの方向です。
### 時間軸で聞く
用意された志望動機は、たいてい「現在の結論」の形をしています。そこで、結論に至るまでの時間の流れに問いを向けます。
「いつごろから、この業界を見はじめましたか」「見はじめたときと、いまとで、印象が変わったところはありますか」「当社を知る前は、どんな企業を見ていましたか」。準備されているのは結論であって、そこに至る途中の変化までは用意されていないことが多く、素の判断が出てきます。
### 比較で聞く
「他社でもいいのでは」と直接ぶつけると、防御の答えが返ってきます。同じことを、比較の形で聞くと様子が変わります。
「同じ業界で、他に見ている企業はありますか」「その企業と当社で、迷いそうなのはどんな点ですか」「もし当社に来ないとしたら、どこを選びそうですか」。追い詰める問いではなく、本人の判断基準を教えてもらう問いとして置きます。企業を比べる基準が語れる学生は、志望動機の言葉が薄くても、判断の軸を持っていることがあります。
### 具体で聞く
抽象的な言葉が出てきたら、その場で定義を尋ねます。「成長できる環境に惹かれました」なら、「成長というのは、具体的にどんな状態を指していますか」。「社員の方の雰囲気が良かった」なら、「どの場面で、どんなやりとりを見てそう感じましたか」。
抽象語は、準備された言葉であることが多い一方、その中身は本人にしか語れません。ここを掘ると、用意された台本から自然に外れます。
「志望動機が弱い」を、志望度が低いと読み替えない
深掘りの結果、志望動機が薄いと分かった。このとき、すぐ「志望度が低い」と結論づけるのは早いかもしれません。
面談では、志望度は高いのに言葉にできない学生に頻繁に出会います。カジュアルな問いかけの意図をつかめずに慌ててしまい、本来いちばん伝えたかったことを話せなかった、という振り返りも複数聞いてきました。特に、面接の経験が少ない時期の学生ほど、思っていることと話せることのあいだに開きがあります。
見るべきなのは、志望動機の完成度ではなく、その裏にある判断の質です。何を基準に企業を見ているのか、その基準はどこから来ているのか、当社の情報をどこまで取りにいったのか。ここが見えていれば、言葉の巧拙は入社後の活躍とは別の話として扱えます。逆に、流暢に語れても基準が語れない場合は、注意して見る余地があります。
詰問にならない線引き——どこで止め、どう返すか
深掘りと詰問の境目は、実はそれほど曖昧ではありません。実務的には、次の四つを守るだけでかなり防げます。
ひとつめは、同じ問いを三度重ねないこと。「なぜ」を繰り返すと、答えられなくなった時点で会話が止まり、本人は責められていると感じます。二度で止まらなければ、「なぜ」を「いつ」「どこで」「どんなときに」に置き換えます。
ふたつめは、掘る前に前置きを置くこと。「答えづらければ、分からないとおっしゃっていただいて構いません」と一言添えるだけで、場の圧はかなり下がります。
みっつめは、答えられなかったこと自体を減点材料にしないこと。答えられない問いがあるのは、準備の範囲外に出た証拠でもあります。面接は論破の場ではなく、その人がどう考え、どう動く人かを知る場です。私たちも学生と話すなかで、意地悪に見える問いへの向き合い方を一緒に整理することがありますが、そこで大事にしているのは「正解を返すこと」ではなく「正直に考えを言葉にすること」だと伝えています。
よっつめは、掘ったら受け取ること。答えを聞いたら、次の問いにいく前に「なるほど、そこが引っかかっていたんですね」と一度返す。この受け取りがないまま問いだけが続くと、対話ではなく尋問になります。聴く側の姿勢そのものについては面接・面談で本音を引き出す「傾聴」——聴き方と問いの立て方で詳しく整理しています。
志望動機は、面接のなかでも育つ
最後にもうひとつ。志望動機は、面接の時点で完成していなければならないものではありません。
学生が自社について語れることの量は、企業がそれまでに渡した情報の量に左右されます。説明会や面談で伝わっていないことを、面接で「なぜ当社なのか」と問うても、答えようがない場合があります。深掘りをして薄さが見えたなら、それは学生の準備不足であると同時に、自社の情報提供が届いていなかったサインでもあります。
実務的には、深掘りのあとに「いま話していて、当社について知りたくなったことはありますか」と一問置くのが有効です。ここで出てくる問いの質は、そのまま関心の深さを映します。そして答えることで、次の選考までに志望動機が育つ余地も生まれます。
よくある質問
Q1. 志望動機の深掘りと圧迫面接は、どこが違いますか?
A. 目的と受け取り方が違います。深掘りは、本人の判断や背景を知るために行うもので、答えを受け取りながら進みます。同じ問いを重ねて答えに詰まらせたり、答えられないこと自体を責めたりすると、詰問に近づきます。「なぜ」を繰り返さない、答えを一度受け取ってから次にいく、という二点で線は引けます。
Q2. 「他社でもいいのでは」と聞くのは有効ですか?
A. 直球で聞くと防御の答えが返りやすくなります。同じことを確かめたいなら、「他に見ている企業はありますか」「その企業と迷うとしたら、どんな点ですか」と比較の形で尋ねるほうが、本人の判断基準が見えます。
Q3. 志望動機が薄い学生は、その時点で見送るべきですか?
A. 志望動機の完成度と志望度は、一致するとは限りません。言葉にするのが苦手なだけの学生もいれば、自社の情報が十分に届いていない場合もあります。何を基準に企業を選んでいるか、その基準がどこから来ているかを確かめたうえで判断することをおすすめします。
まとめ
- 深掘りが空振りするのは、問いが学生の準備の範囲に収まっているから
- 掘る前に「業界の理由」「会社の理由」「職種の理由」を切り分ける
- 時間軸・比較・具体の三方向で聞くと、用意された答えの外に出られる
- 志望動機の薄さを、そのまま志望度の低さと読み替えない
- 同じ問いを三度重ねない、答えを受け取ってから次にいく——これで詰問は避けられる
志望動機の深掘りは、学生を試す時間ではなく、その人の判断の仕方を知る時間です。私たちルビーインも、逆求人型イベント『ウェルハンティング』で学生一人ひとりと1対1で向き合うなかで、うまく語れないだけの本音に何度も出会ってきました。次の面接では、「なぜ当社ですか」の代わりに「いつごろから見はじめましたか」と聞いてみてください。返ってくる言葉の質が、変わるはずです。
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