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内定承諾率を上げるには——指標の正しい見方と、打ち手の優先順位
内定承諾率を上げたい。そう考えたとき、多くの企業がまず内定を出した後のフォローを厚くしようとします。ただ、現場の話を聞いていると、承諾率が動く場所は内定の前——選考の途中にあることのほうが多い。優先順位をつけるなら、①内定を出す相手を絞る、②選考の途中に魅力づけを組み込む、③判断材料を正直に渡す、④待たせない、の順です。本記事では、内定承諾率という指標の見方を整理したうえで、この四つの打ち手をどう考えるべきかを実務目線でまとめます。
内定承諾率とは——計算方法と、指標として見るときの注意点
内定承諾率とは、内定を出した人のうち、入社の意思を示して承諾に至った人の割合です。計算式はシンプルで、承諾した人数 ÷ 内定を出した人数 × 100。裏返しが内定辞退率で、両方を足せばおおむね100になります。
シンプルな指標ですが、扱うときには二つ注意点があります。
一つは、母数の取り方が企業によって違うことです。内々定と内定を分けているか、承諾後に辞退した人をどう数えるか、複数職種をまとめるか分けるか。ここが揃っていないと、去年と今年ですら比較になりません。まず自社の中で定義を固定することが先です。
もう一つは、平均値と比べてもあまり意味がないことです。公表されている調査はいくつかありますが、調査ごとに対象も定義も異なります。加えて、承諾率の水準は企業によってまるで違います。私たちルビーインが累計5,000件を超える打ち合わせで各社の実績を聞いていても、同じ規模・同じ業界でも数字の水準は大きく開きます。他社と並べて一喜一憂するより、自社の過去の数字と比べるほうが、はるかに使える情報になります。
平均値と比べる前に、自社の内訳を分解する
全体の承諾率は、複数の異なる状況を平均してならした数字です。そのままでは、どこに手を打てばよいかがわかりません。有効なのは、次の三つの軸で内訳を出すことです。
職種別に見る。 打ち合わせでよく聞くのは、「総合職はほぼ計画通りに決まるのに、技術職だけが毎年秋まで残る」といった偏りです。全体では悪くない数字でも、片方の職種が足を引っぱっているケースは珍しくありません。この場合、打ち手は全社共通ではなく、職種ごとに変わります。
経路別に見る。 どの入口から来た学生が承諾に至りやすいかは、企業によってはっきり差が出ます。ある企業では、特定の経路から来た内定者だけが承諾に至っている、という状態になっていました。承諾率が低い経路には、そもそも自社と志向が合いにくい層が含まれているのかもしれません。
時期別に見る。 早い時期に内定を出した人と、後半に出した人とでは、承諾率が変わる企業があります。「後半になるほど承諾率が上がってくる」という声もあれば、その逆もあります。どちらが良いという話ではなく、自社の傾向を知っておくと、内定を出すペース配分の判断ができるという点が重要です。
この三つを出すだけで、「承諾率が低い」という漠然とした課題が、「この職種の、この経路の、この時期が弱い」という具体的な課題に変わります。
承諾率が決まるのは、内定を出した後ではない
内定承諾率という言葉の響きから、つい「内定を出してから承諾までの期間の勝負」だと考えがちです。しかし実務では、承諾するかどうかの判断材料の大半は、それ以前に集まっています。
学生との面談でも、承諾の決め手として挙がるのは「一緒に働く人の雰囲気」「社風が自分に合うか」「先輩がいる安心感」「働く環境が想像できたこと」といった要素です。条件面を最優先に挙げる学生ももちろんいますが、最後に迷ったときの決め手として語られるのは、関係性や実感に関わる部分であることが多い。そしてそれらは、内定通知の一週間でつくれるものではありません。
裏返せば、選考の途中で「この会社なら働く姿が想像できる」と思ってもらえていないまま内定を出すと、承諾のフェーズは他社との条件比較の勝負になります。そこで勝ちにいくのは、多くの企業にとって分の悪い戦い方です。
内定承諾率を上げる四つの打ち手
打ち手は数多くありますが、効き方の順に並べると次のようになります。
### 1. 内定を出す相手を、そもそも絞る
承諾率の分母は「内定を出した人数」です。合いそうにない相手に内定を出せば、分母だけが増えます。ある企業は「志向がずれている方には内定を出さない」と決めており、その結果として承諾のフェーズで悩むことがほとんどない、という状態をつくっていました。
もちろん、採用人数を確保する必要はあります。ただ、承諾率が低いときにまず疑うべきは、フォローの薄さではなく見極めの基準が曖昧になっていないかです。ここは母集団の入口設計とも直結します。
### 2. 選考の途中に「魅力づけ」を組み込む
面接は見極めの場であると同時に、学生が会社を見る場でもあります。ところが、選考が進むほど質問が中心になり、こちらから伝える時間がなくなっていく設計になっている企業は少なくありません。
対面で会う回数が多いほど承諾につながりやすい、という実感を持つ企業もあります。実際に、選考とは別に社員と話す場を用意したり、最終選考の前に評価しない面談を挟んだりする形に組み替えた例もあります。学生側からも「社員と話す機会がもっとほしい」という声はよく聞きます。魅力づけは、内定後の追加オプションではなく、選考フローの中に最初から置いておくものと考えたほうが機能します。
何を魅力として伝えるかに迷う場合は、自社の魅力は、内定者が知っている——「承諾理由」を言語化するが手がかりになります。すでに承諾してくれた人が、何を決め手にしたのか。そこに自社の訴求点が眠っています。
### 3. 判断材料を、正直に渡す
学生が決めきれない理由の多くは「情報が足りないから」です。配属の決まり方、入社後の育成の流れ、大変な部分。良い面だけを並べると、その場では印象が良くても、他社と比べたときに「都合の良い話しか聞けなかった会社」として残ります。
面談の場でも、学生は良い話と悪い話の両方を聞けた企業のほうを信頼する、という傾向がうかがえます。正直に伝えることは、承諾率を下げる行為ではなく、承諾後の辞退や早期離職を減らす行為でもあります。
### 4. 待たせない
連絡が遅い、次の予定が決まらない、返答期限だけが迫る。この状態は、それだけで志望度を下げます。学生は複数社を並行して見ており、待っている間にも他社の選考は進みます。合否連絡の速さと、次に何がいつあるのかという見通しの提示は、コストをかけずにできる打ち手です。
内定後の接点設計については、新卒の内定辞退を防ぐ——「接触後フォロー」の設計でも詳しく扱っています。
承諾率だけを追いかけたときに起きること
指標として便利な一方、承諾率には落とし穴もあります。
最も分かりやすいのが、内定を出す人数を絞れば承諾率は上がるということです。極端に言えば、確実に来てくれる一人にだけ内定を出せば数字は最高になります。しかしそれでは採用人数が埋まりません。承諾率は、必ず採用充足数とセットで見る必要があります。
もう一つは、承諾がゴールではないという点です。承諾後に辞退が出ることもありますし、入社後に「思っていたのと違った」となれば、無理に承諾を取りにいった分だけ負債が残ります。実際に、承諾後の辞退を見込んで内定数を上積みしている企業もあります。承諾率は、入社後の定着まで見たときに初めて意味を持つ指標です。
承諾率を上げるために、まず測るべきこと
最後に、実務としての一歩です。承諾率を改善したいなら、まず辞退した人がどこで、何を理由に離れたのかを記録することから始めるのが確実です。
多くの企業で、この記録が残っていません。だから翌年も同じ場所で同じように落ちます。辞退の連絡が来たとき、可能な範囲で理由を聞き、簡単でよいので残しておく。承諾してくれた人にも、決め手を聞いて残しておく。この二つが揃うと、「何を強化すべきか」が推測ではなく事実から言えるようになります。
数字を分解し、記録を残し、選考の途中に手を入れる。順番としてはこれが最も遠回りに見えて、翌年の効き方が変わってきます。
よくある質問
Q1. 内定承諾率はどのように計算しますか。
A. 承諾した人数を、内定を出した人数で割り、100を掛けます。ただし、内々定を含めるか、承諾後の辞退をどう扱うかで数字は変わります。まず自社の中で定義を固定し、年ごとに同じ条件で比較できるようにしておくことが大切です。
Q2. 内定承諾率の平均はどれくらいですか。
A. 公表されている調査はありますが、対象や定義が調査ごとに異なるため、そのまま自社の基準にするのは難しいのが実情です。私たちが各社から実績を聞いていても、水準は業界や職種、選考の設計によって大きく開きます。平均値より、自社の前年実績を基準にすることをおすすめします。
Q3. 内定を出した後からでも、承諾率は上げられますか。
A. 上げられる余地はあります。連絡を早くする、次の予定の見通しを示す、社員と話す場を用意するといった打ち手は内定後でも有効です。ただし判断材料の大半は選考の途中で形成されているため、翌年に向けては選考フローそのものを見直すほうが効きやすくなります。
まとめ
- 内定承諾率は「承諾者数 ÷ 内定者数」。まず自社の中で定義を固定する
- 平均値との比較より、職種別・経路別・時期別に内訳を分解するほうが打ち手につながる
- 承諾の判断材料は、内定後ではなく選考の途中で形成されている
- 打ち手の優先順位は「内定を出す相手を絞る→選考途中に魅力づけを組み込む→正直に情報を渡す→待たせない」
- 承諾率は採用充足数とセットで見る。数字だけを追うと母数を絞る方向に歪む
内定承諾率は、採用活動全体の結果が最後に表れる指標です。だからこそ、その数字だけを動かそうとするより、途中の設計を見直すほうが近道になります。私たちルビーインも、逆求人型イベント『ウェルハンティング』を通じて、企業と学生が1対1でじっくり向き合える場づくりに伴走しています。まずは今年の内定者に、承諾の決め手を聞くところから始めてみてください。
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