BLOG ブログ
適性検査を採用でどう使うか——点数で足切りする前に考えたいこと
適性検査は、新卒採用の選考フローに組み込んでいる企業が多い一方で、「結局どう使えばいいのか」があいまいなまま運用されがちな仕組みでもあります。点数で並べて上から通すだけなら、面接の前に人数を減らす道具でしかありません。この記事では、適性検査で分かること・分からないことを整理したうえで、点数だけで足切りする使い方の危うさと、面接と組み合わせて仮説を作る使い方を、私たちルビーインが企業との打ち合わせや学生との面談で見てきたことをもとに整理します。
適性検査は「落とすため」より「聞くことを決めるため」に効く
適性検査を導入する動機は、たいてい二つに分かれます。応募が多く、面接の工数を抑えたいという運用上の理由。もうひとつは、面接だけでは見えにくい部分を補いたいという見極め上の理由です。
前者だけを目的にすると、検査は人数を減らす関門になります。これは必要な場面もありますが、それだけで終えると、せっかく取ったデータをほとんど使わないまま面接に入ることになります。もったいないのは、適性検査が本来もっとも力を発揮するのが「この学生には何を聞くべきか」を面接前に決められる点だからです。同じ30分の面接でも、事前に確かめたい仮説がある状態とない状態では、聞ける深さが変わります。
適性検査で分かること、分からないこと
適性検査は大きく、言語や数的処理などの基礎的な力をみる能力検査と、行動の傾向や価値観をみる性格検査に分かれます。この二つは性質が違うので、同じ「点数」として扱わないほうが安全です。
能力検査は、業務で必要になる処理の速さや正確さを一定の範囲で推し量る材料になります。ただし、測っているのは限られた形式の課題への対処であって、仕事の成果そのものではありません。打ち合わせでも、検査の結果は高かったのに実務に入ると想定と違った、という趣旨の悩みを複数の企業からうかがっています。
性格検査は、本人の傾向を言語化する助けになりますが、「良い性格・悪い性格」を判定するものではありません。同じ傾向が、ある職場では強みに、別の職場では負担になります。実際、職種によって見る項目を変えている企業もあります。ストレスへの向き合い方を中心にみる企業もあれば、顧客に寄り添う思考が出ているかをみる企業もありました。何を見るかを決めずに結果を眺めても、判断材料にはなりません。
そして、どちらの検査でも測りにくいものがあります。人と関わるなかで発揮される力や、環境が変わったときの伸びしろ、そして本人が何を大事にしているかの背景です。ここは面接で聞くしかない領域です。
点数で足切りする使い方は、何が危ういのか
適性検査を選考の入り口に置き、一定の点数に届かない応募者を機械的に落とす。この運用は珍しくありません。実際、打ち合わせのなかで、検査で足切りをしているとはっきり述べる企業もありましたし、検査の通過率の低さを採用課題として挙げる企業も複数ありました。
足切りそのものが常に誤りだとは考えていません。応募数に対して面接できる人数が限られていれば、どこかで絞る必要はあります。危ういのは、基準の置き方と、その基準が何を落としているかを誰も見ていない状態です。
危うさは、大きく三つあります。
ひとつめは、基準の根拠が薄いまま固定されることです。「前任者が設定した点数」がそのまま引き継がれ、自社で活躍している社員の傾向と照らし合わせたことがない、という状態はよく起こります。
ふたつめは、検査が学歴の代わりとして扱われやすいことです。点数の分布を大学の属性と結びつけて語られる場面に出会うことがありますが、これを前提に基準を置けば、検査という客観的な体裁をまといながら、実際には学歴での選別を行っているのと変わりません。私たちルビーインは、学歴や性別といった属性で候補者を絞る運用をおすすめしていません。検査を使うなら、あくまで自社の仕事で必要な要素に紐づけて基準を置くべきだと考えています。
みっつめは、落とした人のなかに自社に合う人がいたかどうかを検証できないことです。落ちた候補者はその後の情報が残らないため、基準は年々「そういうもの」として温存されていきます。
一方で、点数だけで判断しない運用をしている企業もあります。打ち合わせでは、学歴では絞らず検査の結果も参考程度にとどめ、点数が低めでも人物像が合えば内定を出しているという企業や、検査の結果と面接担当者の所感の両方を並べて判断しているという企業の話を聞いてきました。使い方は、企業が決められます。
結果は「答え」ではなく「仮説」として面接に持ち込む
適性検査を見極めに活かすなら、結果を判定ではなく仮説として扱うのが実務的です。手順は難しくありません。
第一に、結果のなかから、自社の仕事で重要になる項目を二つか三つだけ選びます。全項目を面接で確かめようとすると、質問が散らかります。
第二に、その項目について「もし本当にこの傾向なら、過去にこういう場面があったはずだ」という予想を立てます。たとえば慎重さが強く出ているなら、決めるまでに時間をかけた経験があるはずだ、といった具合です。
第三に、面接ではその予想を、傾向の話ではなく行動の話で確かめます。「あなたは慎重なタイプですか」と聞いても、検査結果をなぞった答えが返ってくるだけです。「最近、決めるのに時間がかかった場面はありましたか」「何が引っかかっていましたか」と、具体的な場面から聞きます。行動を軸にした聞き方の型は「見極める質問」をどう設計するか——場当たり面接から抜け出すで整理しています。
第四に、仮説が外れたときこそ拾います。検査の傾向と面接での様子が食い違うのは、検査が間違っているとは限らず、場面によって出方が変わるという情報です。どちらが本当かではなく、「どんな場面でどちらが出るのか」を確かめにいくほうが、実際の配属を考えるうえで役に立ちます。
実施タイミングと、受検の負担という見落とし
実施のタイミングは、書類選考のあと、一次面接のあと、最終選考の前後と、選択肢があります。入り口に置けば絞り込みに使え、面接のあとに置けば判断の補強に使えます。仮説づくりに使いたいなら、面接の前に結果が手元にある形が自然です。
見落とされがちなのが、受検そのものが候補者にかかる負担だという点です。ある企業からは、受検に時間がかかるために学生のなかで優先度が下がり、途中で離れてしまうことがある、という悩みをうかがいました。逆に、面接の日程を先に決めたうえで、合否をつけない性格診断として実施し、選考への移行率を保っている企業もあります。
同じ検査でも、「これを通らないと先に進めない関門」として案内するのか、「面接をより良い時間にするための事前情報」として案内するのかで、受け取られ方は変わります。案内文の一行を見直すだけでも、離脱の理由は減らせます。
結果の読み方を、面接官のあいだでそろえる
適性検査を複数の面接官が使う場合、読み方がそろっていないと、同じ結果から違う結論が出ます。一方の面接官は懸念材料として扱い、もう一方は気にしない、という状態です。これは検査の問題ではなく、運用の問題です。
そろえ方は、評価基準をそろえる作業とほぼ同じです。どの項目を見るのかを絞る、その項目が自社のどの仕事に効くのかを言葉にする、過去の内定者の結果を数例持ち寄って読み方を合わせる。この三つで、ばらつきはかなり減ります。面接官間のばらつきそのものについては面接官によって評価がブレる——基準の統一とすり合わせで防ぐ仕組みづくりもあわせてご覧ください。
なお、同じ検査を長く使い続けている企業ほど、社内に読み方の蓄積ができています。頻繁に切り替えると、比較の土台が失われます。導入を検討する段階で、続けられる運用かどうかも見ておきたいところです。
使い方を決める前に、社内で確かめておきたいこと
最後に、導入や見直しの前に確かめておきたい点をまとめます。
- 何のために使うのか。人数の絞り込みか、面接の材料づくりか、配属の参考か
- どの項目を見るのか。自社の仕事のどの部分に紐づくのか
- 基準を置くなら、その根拠は何か。属性による選別になっていないか
- 結果を誰が見て、どこまで共有するのか。応募者の個人情報として適切に管理できているか
- 候補者にどう案内するのか。受検の負担と目的を伝えられているか
これらに答えられないまま導入すると、検査は「とりあえずやっているもの」になります。逆に、答えを持って運用すれば、面接の質を押し上げる材料になります。
よくある質問
Q1. 適性検査の結果だけで合否を決めてもよいですか?
A. おすすめしません。検査で測れるのは限られた側面で、人と関わるなかで発揮される力や、環境による伸びしろは含まれません。人数の都合でどこかを絞る必要がある場合でも、基準の根拠を自社の仕事の要件に紐づけ、定期的に見直す前提で運用するほうが安全です。
Q2. 適性検査は、選考のどのタイミングで実施するのがよいですか?
A. 目的によります。応募が多く絞り込みに使うなら選考の入り口、面接の材料にするなら面接の前、判断の補強に使うなら面接のあとが自然です。ただし受検の負担が離脱につながることもあるため、案内の仕方とセットで決めることをおすすめします。
Q3. 検査結果と面接での印象が食い違うときは、どちらを信じればよいですか?
A. どちらかを選ぶより、「どんな場面でどちらの姿が出るのか」を確かめにいくほうが有効です。食い違いは、場面によって行動が変わるという情報でもあります。過去の具体的な場面を追加で聞くと、配属や育成を考えるうえでの手がかりになります。
まとめ
- 適性検査は、人数を減らす関門にも、面接で聞くことを決める材料にもなる
- 能力検査と性格検査は性質が違い、同じ「点数」として扱わない
- 点数だけの足切りは、根拠の薄さ・属性による選別への横滑り・検証できなさという危うさを抱える
- 結果は判定ではなく仮説として扱い、行動を聞く質問で確かめる
- 読み方を面接官のあいだでそろえ、受検の負担も設計に含める
適性検査は、使い方次第で見極めの精度を上げる材料にも、判断を止める言い訳にもなります。私たちルビーインも、逆求人型イベント『ウェルハンティング』で学生一人ひとりと1対1で向き合うなかで、数値だけでは見えない部分が確かにあると感じています。まずは自社の検査結果から、面接で確かめたい項目を二つだけ選んでみてください。次の面接で聞くことが、はっきりします。
-
関連記事
-
内定者研修は何をやるか——目的で変わる中身と、やりすぎない線引き
内定者研修は、「やったほうがいい」とは分かっていても、何をどこまでやるかで迷いや...
-
就活の口コミにどう向き合うか——消すより、選考の場で正直に伝える
自社の名前で検索すると、採用サイトより先に口コミが目に入る——そんな状態を前に、...
-
採用代行(RPO)はどこまで任せるか——外に出す業務と残す業務の線引き
採用代行(RPO)を検討するとき、多くの担当者が最初に悩むのは「どこまで任せられ...
-
採用競合は誰か——同じ学生を取り合う相手を、併願先から逆算する
「うちの採用競合はどこか」と聞かれて、同業他社の名前を挙げる会社は多いと思います...
-
インターンシップの種類と選び方——目的で変わる1day・短期・長期
インターンシップをやろうと決めたあと、最初に迷うのが「どの種類でやるか」です。1...
-
