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採用広報とは——ブランディングとの違いと、何から始めるか

ルビーイン株式会社『ウェルハンティング』編集部

社員が職場の様子を撮影・記事化して発信し、その内容が学生に届いている様子

採用広報とは、自社が出会いたい人に向けて、会社の情報を届ける活動のことです。似た言葉に採用ブランディングがありますが、両者は目的も進め方も少し違います。本記事では、採用広報の意味と採用ブランディングとの違いを整理したうえで、これから始める企業が「何から手をつければよいか」を、実務の順番に沿ってまとめます。

採用広報とは——「知ってもらう」ためにする発信のこと

採用広報とは、求人票や募集要項だけでは伝わらない自社の情報を、届けたい相手に向けて発信する活動です。事業の中身、働いている人の姿、大切にしている考え方、実際の仕事の一日。こうした情報を、自社サイトや記事、動画、SNSといった手段で外に出していきます。

普通の広報との違いは、相手が誰かです。企業広報は顧客や取引先、社会全体に向けたものですが、採用広報の相手は「これから自社で働くかもしれない人」です。だから、伝える内容も、置く場所も変わります。売上や事業の実績より、どんな人がどんな環境で働いているかのほうが優先されます。

そして重要なのは、採用広報は選考が始まる前から効いてくるということです。学生は、企業の名前を知ってから応募を決めるまでのあいだに、自分で調べています。そこに情報がなければ、そもそも比較の土俵に上がりません。

採用広報と採用ブランディングは、どう違うのか

この二つはよく混同されます。整理するなら、こう分けるとわかりやすくなります。

採用ブランディングは、「どう思われたいか」を決めること。 自社はどんな会社として認識されたいのか、どんな人に来てほしいのか。方向性を定める上流の作業です。

採用広報は、「その方向性を、どう届けるか」という実行のこと。 決めた中身を、コンテンツにして、届く場所に置いていく。手を動かす下流の作業です。

順番としてはブランディングが先で、広報が後になります。ただ現実には、この順番が崩れたまま走り出すケースがよくあります。「発信しないといけない」という危機感から手段だけが先に決まり、何を言うかが決まっていない。すると、更新は続くのに何も残らない、という状態になりがちです。方向性の定め方については、採用ブランディングの基本——知名度がなくても、選ばれる会社になるためにで詳しく扱っています。

なぜ、いま採用広報が必要になっているのか

採用広報が語られるようになった背景には、はっきりした事情があります。

一つは、知名度の差が、母集団の差に直結しやすくなったことです。打ち合わせの場では「掲載しても他社に埋もれてしまう」「大きな会場では名前を知られている企業に人が流れる」という悩みが、業界を問わず繰り返し語られます。名前で選ばれない企業が土俵に上がるには、名前以外の情報を先に届けておく必要があります。

もう一つは、学生が自分で調べるようになったことです。面談で話を聞いていると、社員のインタビュー記事や動画を見て「こういう社会人になりたいと思った」「社員一人ひとりが会社の考え方を体現していると感じた」と語る学生がいます。逆に、現場社員の話が見つからない企業については、働くイメージが持てないまま比較の対象から外れていきます。制度や事業の説明より、人の姿のほうが判断材料になっているというのが、現場での実感です。

三つ目は、出会った後の動機づけが必要になったことです。ある企業は、イベントで多くの学生と接触できたものの、その後の選考につなげる段階で動機づけができなかったと振り返っていました。会えたとしても、学生が後から自社を調べたときに何も出てこなければ、興味はそこで止まります。採用広報は、集める活動というより、出会いを無駄にしないための土台という側面が強い活動です。

発信の場は、三つに分けて考える

手段の名前を一つずつ覚えようとすると混乱します。誰の場所かで三つに分けると整理できます。

自社の場。 採用サイト、社員インタビュー記事、自社ブログ、動画。掲載する内容を自由に決められ、資産として蓄積されます。一方、置いただけでは見に来てもらえません。「調べた人に、きちんと届く」性質の場です。

他者の場。 SNS、口コミサイト、社員個人の発信。拡散が起きる可能性がある代わりに、内容を完全にはコントロールできません。届く速度は速いものの、続けないとすぐ埋もれます。

費用で買う場。 求人サイトへの掲載、広告、イベント出展。露出そのものは買えますが、止めれば効果も止まります。

この三つは代替関係ではなく、役割が違います。買う場で出会い、他者の場で思い出してもらい、自社の場で深く知ってもらう。そういう流れで機能します。SNSやオウンドメディアを軸に据える場合の続け方は、SNS・オウンドメディアで母集団を育てるも参考になります。

何から始めるか——最初の一歩は「発信」ではない

これから採用広報を始める企業が、最初にやるべきことは発信ではありません。次の順番をおすすめします。

1. 誰に届けたいかを、一人分の解像度で決める。 「若手が欲しい」ではなく、どんな志向の人に来てほしいのか。ここが曖昧だと、何を書いても当たり障りのない内容になります。

2. その人が知りたいことを、書き出す。 自社が言いたいことではなく、相手が知りたいこと。仕事の一日、入社後の育成、大変なこと、どんな人が活躍しているか。面談で学生から実際に聞かれた質問を並べるのが、いちばん確実です。

3. すでにある素材を棚卸しする。 説明会で話している内容、面接で毎回聞かれることへの回答、社内報。ゼロから作る必要があるケースは意外と少なく、すでに口頭で説明していることを文字と映像にするだけで、最初のコンテンツは揃います。

4. 置き場所を一つ決めて、そこを整える。 複数の場を同時に始めると、たいてい全部が中途半端になります。まずは調べた人が必ず辿り着く場所——採用サイトや自社ページ——を整えるのが先です。

少人数の体制で、続けるための設計

採用広報でいちばん多い失敗は、始めたのに続かないことです。理由ははっきりしていて、工数です。

新卒採用の担当が一人、あるいは他業務との兼務という企業は珍しくありません。「後追いの連絡が十分にできていない」「一人で回しているので工数がかかる」という声は、打ち合わせでもよく聞きます。その状態でコンテンツ制作を積み増せば、どこかが止まります。実際に、会社の方針として発信を始めたものの、工数と費用がそちらに取られてしまい、「順序として今なのか」という違和感を持ちながら進めている、という声もありました。別の企業では、制作が間に合わず、予定していた時期に立ち上げられなかったという話も出ています。

続けるための現実的な設計は、三つです。

量を決めない。頻度を決める。 月に何本、ではなく「四半期に一本、必ず出す」。少なくても、途切れないほうが機能します。

現場を巻き込む。 広報担当が一人で取材から執筆まで抱えると止まります。社員インタビューは、社員自身に語ってもらう形にするほど負荷が下がり、内容も生々しくなります。

効果は、応募数ではなく「言及」で見る。 発信の成果を応募数だけで測ると、たいてい効果が見えず、やめる判断になります。それより、面接で「記事を読みました」「動画を見ました」と言われた回数を数えるほうが実態に近い。学生の理解度が上がっていれば、選考中の会話の質も変わります。この変化のほうが、採用広報の本来の効き方です。

よくある質問

Q1. 採用広報と採用ブランディングの違いは何ですか。
A. 採用ブランディングは「どんな会社として認識されたいか」を決める上流の作業、採用広報は「その中身をどう届けるか」という実行の作業です。順番としてはブランディングが先ですが、方向性が決まらないまま発信だけ始めてしまうケースが多く、その場合は更新が続いても印象が積み上がりません。

Q2. 採用広報は何から始めればよいですか。
A. 発信より前に、届けたい相手を一人分の解像度で決め、その人が知りたいことを書き出すところからです。そのうえで、説明会や面接ですでに口頭で伝えている内容を棚卸しすると、新しく作らなくても最初のコンテンツが揃うことが多くあります。置き場所は、まず一つに絞ってください。

Q3. 採用広報の効果は、どう測ればよいですか。
A. 応募数だけで測ると効果が見えにくく、続ける判断が難しくなります。選考の場で「記事を読んだ」「動画を見た」と言及された回数、志望動機の具体性、質問の内容の変化など、理解度が上がったことを示す手がかりを併せて見ることをおすすめします。

まとめ

  • 採用広報とは、出会いたい人に向けて自社の情報を届ける活動。相手が「働くかもしれない人」である点が企業広報との違い
  • 採用ブランディングが「どう思われたいか」を決める作業、採用広報は「どう届けるか」の実行
  • 発信の場は「自社の場/他者の場/費用で買う場」に分けると役割が整理できる
  • 始めるときの順番は、相手を決める→知りたいことを書き出す→既存素材を棚卸しする→置き場所を一つ整える
  • 続かない最大の理由は工数。量より頻度を決め、現場を巻き込み、効果は言及で見る

採用広報は、すぐに数字が動く活動ではありません。それでも、学生が自分で調べる前提になった以上、調べたときに何もない状態は不利に働きます。私たちルビーインも、逆求人型イベント『ウェルハンティング』を通じて、企業が自社の言葉で学生に向き合う場づくりに伴走しています。まずは、面談で毎回聞かれる質問を三つ書き出してみてください。それが最初のコンテンツになります。