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採用競合は誰か——同じ学生を取り合う相手を、併願先から逆算する

ルビーイン株式会社『ウェルハンティング』編集部

一人の学生に複数の企業の担当者が声をかけ、それを別の担当者が離れて把握している様子

「うちの採用競合はどこか」と聞かれて、同業他社の名前を挙げる会社は多いと思います。ところが実際に学生の併願先を並べてみると、想定していた同業がほとんど出てこない、ということが珍しくありません。採用の競合は、事業の競合とは別の理屈で決まるからです。本記事では、業界が違っても競合になる構造、学生の併願先から逆算する調べ方、そして比較されたときの伝え方を、私たちルビーインが日々の面談と打ち合わせで見てきた傾向から整理します。

採用競合と事業競合は、別物として扱う

事業の競合は「同じ顧客に、同じ商品を売っている会社」です。一方、採用の競合は「同じ学生に、同じタイミングで選ばれようとしている会社」を指します。決めるのは市場ではなく、学生の頭の中です。

だから、業界の分類とはずれます。企業の採用担当者と打ち合わせで「どこと競合しますか」という話をすると、同業がほとんど挙がらないケースが実際にあります。医療・福祉領域の企業が、人材系や営業職中心の企業、コンサルティング会社と競合していたり、不動産の企業が人材系や金融・保険と重なっていたり、IT企業が広告業界と重なっていたり。「同業とはあまり重ならない」とはっきり話す会社も複数あります。

事業の競合を採用の競合だと思い込んだままだと、比較されている相手を見ないまま施策を打つことになります。訴求内容も、参加する場の選び方も、実際の勝負とずれていきます。

業界が違っても競合になるのは、学生が「業界」で束ねていないから

学生は、企業を業界で並べていません。「若いうちから裁量がある」「人の人生に関わる」「営業力が身につく」といった、働き方や得られる経験の軸で束ねています。

面談で学生の話を聞いていると、その束ね方がよくわかります。「人と関わる仕事がしたい」という軸で動いている学生は、人材、不動産、金融、教育、小売と、業界をまたいで受けます。「若手のうちから任されたい」という軸なら、ベンチャーと大手の子会社が同じリストに並びます。学生の側から見れば、それは一貫した行動です。

企業側からは、この束ね方は見えにくいものです。ある会社は「採用しようとしている層は、人材営業や不動産、コンサルティングの企業を受けている人たちだ」と自社のターゲットを説明していました。業界名ではなく、学生の志向で競合を定義しているわけです。この解像度に到達すると、施策の選び方が変わります。

学生が複数の内定を前にどう迷い、何で決めているのかは、複数内定で迷う学生に、選ばれる企業の関わり方でも整理しています。

競合は「時期」と「ターゲット」で入れ替わる

もう一つ見落とされやすいのが、採用競合は年間を通じて固定ではない、ということです。

ある企業は、「早い時期に動いている学生はメーカーと重なり、後半に動く学生は同業と重なる」と話していました。学生の動き出し時期によって、そもそも比較対象に入っている企業群が違うわけです。同じ求人でも、3月に会う学生と秋に会う学生では、隣にいる会社が変わります。

ターゲットを変えたときにも競合は動きます。求める人物像を見直した企業が、「これまで同業と重なることはなかったが、見直しをかけたことで重なりそうだ」と話していたことがあります。ペルソナは採用競合を決める変数でもある、ということです。

だから、競合の把握は一度やって終わりではありません。採用シーズンの前半・後半で一度ずつ、少なくとも年に二度は見直すくらいの頻度が現実的です。

併願先から逆算する、競合の調べ方

競合を推測で決めず、学生から逆算します。手順はシンプルです。

### 1. 選考中の学生に、選考の一部として聞く

面接や面談のなかで、「他にどんな会社を見ていますか」「その会社のどこに惹かれていますか」と聞きます。ポイントは社名だけで終わらせず、理由まで聞くことです。社名は競合の候補にすぎませんが、理由は自社が比較されている評価軸そのものだからです。

### 2. 内定者・入社者に「最後まで迷った会社」を聞く

内定を承諾した学生は、比較の結果を持っています。「最後まで迷ったのはどこか」「何が決め手になったか」を聞くと、実際に競り合った相手が正確に出てきます。承諾理由の言語化は競合分析にもそのまま使えます。

### 3. 辞退した学生にも、無理のない範囲で聞く

辞退の連絡をもらったときに、責める調子にならないよう気をつけつつ、「差し支えなければ、どんなところに決められたか教えていただけますか」と聞きます。ここで得られる情報は、勝てなかった相手のリストです。

### 4. 頻度順に並べ、上位だけを見る

集めた社名を、出てきた回数の多い順に並べます。全部を追う必要はありません。ある企業の話では、学生が並行して面談している社数はそう多くなく、実際に取り合いになるのは数社程度という感覚でした。私たちが面談で聞いていても、同時に本気で比べている会社はそれほど多くありません。上位数社に絞り、その数社だけを丁寧に見るほうが、実務としては機能します。

絞ったあとは、3C分析のようなフレームワークに落として「学生が求めるもの・自社が出せるもの・競合が出せるもの」を並べると整理しやすくなります。ただし、フレームを埋めること自体が目的にならないよう注意してください。

「勝てない土俵」を見極める

集めた併願先を並べると、負けている理由に傾向が出ます。打ち合わせで挙がる負け筋は、驚くほど共通しています。

  • 勤務地・転勤条件:地元で働きたい学生に対して全国転勤がある場合、条件面での説得は難しくなります。「地元志望の学生に対して全国転勤なので、競合に勝つのが難しいと感じた」という声を複数の会社から聞きます。
  • 待遇水準:稼ぎたいという軸を強く持つ学生に対して、年収レンジで上回る会社が並ぶと、条件では届きません。
  • 知名度・規模:大手やその子会社と最終段階で並んだときに「口説ききれない」という相談は多く寄せられます。

大切なのは、これらを「努力で覆す」と考えないことです。条件で勝てない土俵に乗り続けると、担当者の疲弊だけが残ります。負ける理由が条件面にあるなら、比べられる前に土俵を変えるほうが現実的です。

たとえば、母集団は足りているのに競り負けている会社と、そもそも会えていない会社では、打つ手がまったく違います。前者は伝え方と選考体験の問題、後者は出会う場の問題です。ここを混同しないでください。

比較されたときの伝え方——他社を落とさず、軸を渡す

学生から「他社と迷っています」と言われたときの対応が、最後の分かれ目になります。ここでやってはいけないのは、相手の会社を悪く言うことです。学生は比較の途中にいるので、他社を落とす言葉は「自信のなさ」として受け取られます。

有効なのは、判断の軸を渡すことです。「その会社と当社では、任される時期の考え方が違います」「うちは配属の決め方がこうなっています。そこはご自身の希望と照らして確かめてください」というように、比較の観点を具体化して手渡します。結論は学生が出します。

そのためには、自社の魅力が「他社と何が違うのか」まで分解されている必要があります。「風通しがいい」「人がいい」だけでは、比較の場面では効きません。同じ言葉を、隣の会社も使っているからです。説明会の内容が同業と似通っていて差がつかない、という学生側の指摘も聞かれます。自社の言葉をどう鍛えるかは、自社の魅力を言葉にする——採用担当者の「訴求力」の磨き方を参考にしてください。

競合と当たらない場を選ぶ、という打ち手

競合分析の使いどころは、差別化だけではありません。そもそも当たらない場所を選ぶという使い方があります。

打ち合わせでは、「業界のくくりで集まる場だと同業と重なってしまうので、幅広い志向の学生が集まる場を選んでいる」という会社や、「大手志向の学生は初期の段階で対象から外しているので、大手とは重なりにくい構造になっている」という会社の話を聞きます。どちらも、勝ち筋のある場に自分を置く工夫です。

一方で、「重なる会社が強すぎると厳しい」という懸念もよく聞かれます。イベントや媒体を選ぶときに、集客する学生層だけでなくどんな企業が並ぶかを確認しておくと、参加後の見立てがずれにくくなります。私たちルビーインの逆求人型イベント『ウェルハンティング』でも、企業の採用担当者からこの点をよく尋ねられます。

よくある質問

Q1. 採用競合は何社くらいに絞ればいいですか?
A. 数を追うより、頻度の高い上位に絞るほうが実務的です。学生が本気で比較している会社はそれほど多くないため、併願先として繰り返し出てくる数社を選び、そこだけを深く見る形がおすすめです。年に一度は顔ぶれを見直してください。

Q2. 学生に併願先を聞くのは失礼になりませんか?
A. 聞き方次第です。「他社の状況を確認する」ニュアンスだと詰問に聞こえますが、「就活全体の状況を伺って、こちらから出せる情報を考えたい」という前置きがあれば、多くの学生は自然に話してくれます。答えたくない様子であれば、そこで引くことも大切です。

Q3. 競合企業の情報は、どこから集めればいいですか?
A. まずは自社の面談記録と内定者・辞退者からの情報です。そのうえで、競合の採用サイトや発信内容、募集要項に書かれている条件を見ると、学生が比較している材料がわかります。口コミサイトや掲示板の書き込みも参考にはなりますが、内容の偏りがあるため、鵜呑みにせず傾向をつかむ程度にとどめるのが安全です。

まとめ

  • 採用競合は事業競合と一致しない。学生は業界ではなく「働き方の軸」で企業を束ねている
  • 競合は時期とターゲットで入れ替わるため、年に複数回の見直しが必要
  • 併願先は選考中・内定後・辞退時の三箇所から集め、頻度上位の数社だけを丁寧に見る
  • 比較されたときは他社を落とさず、判断の軸を具体的に手渡す

競合を知る目的は、相手に勝つことそのものではありません。自社が選ばれる理由を、学生の比較の文脈のなかで正しく置き直すことです。次の面談から一問だけ、「他にどんな会社を見ていますか、そのどこに惹かれていますか」を加えてみてください。数週間分たまるころには、想定していた競合像がずいぶん違って見えてくるはずです。