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上司との相性が若手の定着を左右する——相性任せにしない仕組み
若手が続くかどうかを、直属の上司との相性が大きく左右する——現場で働く人ほど、この実感を持っています。とはいえ、相性を完全になくすことはできません。だからこそ必要なのは、相性の良し悪しを個人の努力に委ねず、合わなかったときにも支えが残る仕組みをつくることです。本記事では、上司との相性が若手の定着に及ぼす影響と、相性任せにしない設計を、面談と打ち合わせの現場の声と並べて整理します。
「相性」は、性格の当たり外れではない
はじめに、言葉の意味をそろえておきます。ここで言う相性とは、性格が合う・合わないという占い的な話ではありません。仕事に対する期待のかみ合わせと、関わり方の距離感が噛み合っているかどうかのことです。
たとえば、細かく確認してほしい若手と、任せて見守りたい上司。頻繁に相談したい若手と、まとめて聞きたい上司。どちらにも非はありませんが、噛み合わなければ、若手の側には「放っておかれている」、上司の側には「自分で考えない」という誤解が同時に生まれます。相性の問題の多くは、人格ではなく、期待のズレとして起きています。ここを取り違えて「あの上司は若手を潰す」と個人の資質の話にしてしまうと、打ち手が「上司を替える」しかなくなります。
なぜ直属の上司が、これほど効くのか
若手にとって、直属の上司は特別な位置にいます。仕事を割り振る人であり、評価する人であり、職場の空気を最も強く伝える人でもあります。しかも若手はまだ社内に人脈がなく、比較の材料も持っていません。だから、目の前の上司の反応が、そのまま「この会社での自分の立ち位置」として受け取られます。
私たちルビーインの面談でも、この重さがうかがえる声に出会います。長期のインターンを途中で辞めた学生に理由を聞くと、業務内容ではなく「直属の上司と合わなかった」ことを挙げ、その中身を「なんとなく冷たくなってきたのを感じた」と表現しました。決定的な出来事があったわけではないのに、日々の温度の変化だけで、続ける気持ちが折れていったのです。
企業側の打ち合わせでも、似た構造の話は出てきます。入社してくれた方が短い期間で退職に至った経緯を伺うと、業務のミスマッチと並んで「まわりの人と合わなかった」という説明が挙がることがあります。相性は、待遇や仕事内容と同じ重さで定着に効いている、と考えたほうが実態に近いと感じます。
同じ上司でも、部下ごとに関係の質は変わる
相性を捉える補助線として役立つのが、経営学者のジョージ・グレーンらが発展させたLMX理論(リーダー・メンバー交換理論)です。この理論は、上司が部下全員に同じように接しているつもりでも、実際には一人ひとりとの間に異なる質の関係が築かれている、という点に注目します。信頼が厚く、率直に話せる関係もあれば、業務のやりとりにとどまる関係もある。同じ上司のもとでも、関係の質は一様ではないという捉え方です。
この視点が実務で効くのは、「良い上司/悪い上司」という二分法から抜け出せることです。ある若手とうまくいっている上司が、別の若手とは噛み合わない。これは珍しいことではありません。とすれば、問うべきは上司の人格ではなく、その一対一の関係に何が足りていないのかになります。責める話ではなく、整える話に変わるのです。
相性のズレは、こんな形で表に出る
相性の問題は、本人の口から「合いません」と語られることは、ほとんどありません。表に出るのは、もっと地味な変化です。
一つは、相談の減少。困っていないから減ったのか、相談しづらいから減ったのかは、外からは見分けがつきません。もう一つは、確認の増加。自分で決めてよいはずのことまで細かく許可を取りにくるようになったら、失敗を責められる不安が強まっているサインかもしれません。三つ目は、評価への納得感が薄れること。フィードバックに対する反応が「はい、わかりました」だけになったときは、受け取ることをやめている可能性があります。
どれも「合わない」の証拠にはなりませんが、関係の質が薄くなっている合図としては十分です。
上司の側でできるのは、期待をそろえること
相性を良くしようと性格を寄せにいく必要はありません。効くのは、期待の言語化です。どのくらいの頻度で報告してほしいか、どこまでは自分で決めてよいか、困ったときはどのタイミングで声をかけてほしいか。これらは、放っておくと双方が「言わなくてもわかるはず」と思い込む領域です。
私たちの面談でも、学生が上司に望むことは、具体的な言葉で語られます。相談しやすい相手であること。本音で向き合えること。同じくらいの熱量で目標に向かっていること。共通しているのは、能力の高さより「やりとりが成り立つかどうか」を見ている点です。期待をそろえる対話は、それ自体が「やりとりが成り立つ相手だ」という手応えを渡します。
会社の側でできるのは、相性任せにしないこと
とはいえ、どれだけ丁寧に関わっても、噛み合わない組み合わせは残ります。会社としてやるべきは、そのときに逃げ場が残る設計にしておくことです。
一つ目は、関わり先を複数持たせること。相談先が直属の上司だけだと、そこが噛み合わなかった時点で孤立します。評価に関わらない立場の先輩が伴走する仕組みについては、「ナナメの関係」が若手を支え伸ばすで詳しく扱っています。本記事の主題が直属の上司との関係であるのに対し、あちらは評価から離れた第三の支えの作り方です。両方があると、片方が詰まっても崩れません。
二つ目は、配属後に見直す機会を持つこと。配属は一度決めたら動かせない、という前提を外すだけでも、若手の心理的な圧は下がります。実際に異動させるかは別として、「合わなければ相談できる」と伝わっていることに意味があります。
三つ目は、関係の質を一人の主観に任せないこと。若手の様子を上司一人が抱え込むと、噛み合っていないこと自体が誰にも見えません。人事や別部署の担当者が定期的に接点を持つだけでも、状況は共有されます。人間関係全般をどう支えるかは、「人」で辞めさせない関係づくりに整理があります。
採用と配属の段階で、できること
入社前にできることもあります。面談で学生に「どんな人と働きたいか」を聞くと、志望動機よりずっと素直な答えが返ってきます。細かく教えてほしい人もいれば、任せてほしい人もいる。ここで得た情報は、配属を考えるときの材料になります。加えて、選考中に現場の社員と話す機会をつくれば、学生自身が距離感を確かめられます。良い面だけを見せると入社後にズレが出るのは、上司との関係でも同じです。
よくある質問
Q1. 上司との相性が悪い若手には、異動させるしかないのでしょうか?
A. 異動は選択肢の一つですが、最初の一手にする必要はありません。多くの場合、報告の頻度や相談のタイミングといった期待がそろっていないだけです。まず期待を言葉にし、それでも噛み合わなければ関わり先を増やす。異動はその先で検討するのが現実的です。
Q2. 上司側に問題があるのか、若手側の甘えなのか、判断がつきません。
A. どちらかに原因を寄せる問いの立て方をやめるほうが、話が進みます。同じ上司が別の若手とはうまくいっている、という状況は珍しくありません。人ではなく、その一対一の関係に何が足りていないかを見ると、打ち手が見つかりやすくなります。
Q3. 配属前に、相性を見極めることはできますか?
A. 完全には難しいものの、手がかりは得られます。面談で「どんな人と働きたいか」「どのくらい任されたいか」を聞いておくと、配属の判断材料になります。加えて、選考中に現場の社員と話す機会をつくると、学生の側も空気を確かめられます。
まとめ
- 相性とは性格の当たり外れではなく、期待のかみ合わせと関わり方の距離感の問題
- 直属の上司は若手にとって比較対象のない存在で、日々の温度がそのまま定着に効く
- 同じ上司でも部下ごとに関係の質は変わるため、人格ではなく関係を整える視点で捉える
- 上司側は期待を言語化し、会社側は関わり先を複数持たせ、配属後に見直せるようにする
上司との相性は、なくすことはできませんが、抱え込ませないことはできます。私たちルビーインも、逆求人型イベント『ウェルハンティング』で、学生一人ひとりが「どんな人と働きたいか」を自分の言葉にできる1対1の場づくりに伴走しています。まずは自社の若手に、上司以外に話せる相手がいるかを確かめてみてください。相性任せになっている部分が、見えてくるはずです。
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