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新卒の早期離職を防ぐ——辞める前に出るサインと、企業の初期対応

ルビーイン株式会社『ウェルハンティング』編集部

沈んだ表情の若手社員に先輩が気づいて隣に座り、穏やかに声をかけている様子

新卒の早期離職を防ぐために最初に必要なのは、「なぜ辞めるのか」を漠然と語ることをやめ、どの層で何が起きているのかを切り分けることです。そして、辞めるという決断は、ある日突然生まれるわけではありません。多くの場合、その手前に小さな変化として表に出ています。本記事では、早期離職という現象の全体像と、辞める前に出るサイン、そして気づいたときの最初の一手を、面談と打ち合わせの現場の声と並べて整理します。なお、以下は予防の視点であり、効果を保証するものではありません。

早期離職は、どのくらい起きているのか

厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況」では、大学卒業者の就職後3年以内の離職率が3割台で推移しています。この数字は、特定の業界や特定の企業だけの話ではありません。注目したいのは水準そのものより、この傾向が長く続いてきたという事実です。つまり早期離職は、景気や世代で説明しきれる一過性の現象ではなく、採用と受け入れの構造に埋め込まれた課題だということになります。

私たちルビーインが企業との打ち合わせで聞く声にも、この課題は形を変えて現れます。「入社してくれたものの、すぐに辞めてしまう」「仕事内容のミスマッチが起きている」という悩みは、業種や規模を問わず耳にします。なかには、離職が続いたことを一因として新卒採用そのものを見直す方向に傾く企業もありました。採用でかけた時間が定着で報われないと、採用を続ける気力まで削られていきます。だからこそ、早期離職は「人事の一課題」ではなく、採用戦略そのものを支える土台の話として扱う必要があります。

「なぜ辞めるのか」を、四つの層に切り分ける

早期離職の理由を一つに絞ろうとすると、話は「最近の若手は」で終わってしまいます。有効なのは、原因を層に分けて捉えることです。ここでは四つに分けてみます。

一つ目は条件の層。労働時間、休日、勤務地、健康を保てるかどうか。ここが崩れているとき、他の層をいくら整えても定着は望めません。二つ目は関係の層。相談できる相手がいるか、職場に居場所を感じられるか。三つ目は期待の層。入社前に思い描いていたものと、実際に始まった日々がどれくらい重なっているか。四つ目は手応えの層。自分の仕事が誰かの役に立っている実感や、少しずつ伸びている感覚があるか。

この切り分けが効くのは、打ち手の順番が決まるからです。条件の層に問題があるのに「若手のモチベーションを上げる施策」を重ねても、噛み合いません。逆に条件は整っているのに離職が続くなら、原因は関係・期待・手応えのどこかにあります。まず自社はどの層でつまずいているのかを見立てるところから始めると、施策が空回りしにくくなります。

入社前の期待は、書かれていない約束になっている

四つの層のうち、企業が見落としやすいのが「期待の層」です。ここを捉える補助線として役立つのが、組織心理学者のデニス・ルソーが体系化した「心理的契約」という考え方です。雇用契約書に書かれた条件とは別に、働く側と会社の間には「たぶんこういうことになるはずだ」という暗黙の期待が交わされている、という捉え方をします。

厄介なのは、この期待が言葉になっていないことです。書かれていないので、双方とも「約束した/されていない」の確認ができません。それでも本人の中では、確かに交わされたものとして機能します。だから、選考中に語られた成長の道筋や、面談で感じた職場の温度感が、入社後の日々と食い違ったとき、本人は「話が違う」と感じます。会社側にごまかす意図がなくても、期待は勝手に育つのです。

この視点に立つと、やるべきことははっきりします。良い面だけを飾らず、大変な部分も含めて正直に伝えること。そして入社後に、当初伝えたことと今の仕事がどうつながっているかを、言葉にして橋渡しすることです。期待は、埋めるより先に「そろえて」おくほうが、あとが楽になります。

辞める前に出る、三つの変化

早期離職を防ぐうえで最も効くのは、辞意が固まる前に気づくことです。決意が固まってからの引き止めは、たいてい間に合いません。日々の様子には、その手前で三つの変化が表れます。

一つ目は、言葉が減ること。以前は雑談にも加わっていた若手が、必要な連絡しかしなくなる。会議で意見を言わなくなる。二つ目は、先を語らなくなること。来期のことや半年後の話題になると、話に乗ってこない。将来の話が自分ごとでなくなっている状態です。三つ目は、頼らなくなること。質問や相談の回数が目に見えて減る。一見すると「自立してきた」と映るため、最も見逃されやすい変化です。

私たちの面談でも、この三つ目の重みを裏づける声がありました。アルバイト先やインターン先で新人育成に関わった経験を語る学生は少なくないのですが、彼らが新人の離職理由として挙げるのは、待遇よりも「誰にも不安を相談できていなかった」「上の方針が変わってから、新人が質問しづらい空気になった」といった点です。当事者に最も近い立場で見てきた学生たちが、口をそろえて「相談できなかったこと」を挙げる。この一致は、受け入れる側が重く受け止めてよい示唆だと感じます。

サインに気づいたら、最初に何をするか

変化に気づいたとき、多くの上司がやってしまうのが、いきなり原因を突き止めにいくことです。「最近どうした」「何か不満があるのか」と問い詰めると、本人は身構え、当たり障りのない返事で切り抜けようとします。結果、「特に問題ないと言っていたのに、翌月に退職を申し出た」という展開になります。

有効なのは、順番を変えることです。まず、見えた変化を評価ではなく事実として穏やかに伝えます。「最近、相談が減ったように見えていて、気にかけていた」といった伝え方です。次に、答えを急がず聞く姿勢を示します。原因が今日わかる必要はありません。「話してもいい相手だ」と思ってもらえれば、その時点で初期対応としては十分です。

そのうえで、四つの層のどこが揺れているかを一緒に確かめていきます。条件なのか、関係なのか、期待なのか、手応えなのか。層が見えれば、上司一人で抱えるべき話か、会社として動くべき話かの切り分けもできます。抱え込ませないことは、若手だけでなく、受け止める側の上司にとっても大切な前提です。

個人の頑張りに戻さず、受け入れの設計に戻す

サインへの対応は、あくまで対症療法です。同じことが繰り返されるなら、原因は個人ではなく設計側にあります。誰が何を教えるかが決まっていない、相談先が上司一人に集中している、最初の数週間が行き当たりばったり——こうした状態では、若手がどれだけ頑張っても孤立は起こります。

最初の数か月をどう迎えるかについては、入社後の研修・オンボーディングが定着を左右するという視点で設計を見直すのが近道です。また、離職理由として重い比重を占める人間関係については、「人」で辞めさせないための関係づくりに整理があります。本記事が扱ってきたのが「早期離職という現象の全体像と、気づいた直後の初期対応」だとすれば、この二つは受け入れ体制そのものの設計にあたります。合わせて手を入れると、対応と予防がつながります。

採用の段階から、防げることがある

最後に、入社前にできることも押さえておきます。学生は、早期離職を企業以上に恐れています。面談で就職先を選ぶ軸を聞くと、「離職率が低いこと」を挙げる学生が複数います。逆に、説明を聞くなかで離職率の高さが気になったために志望から外した、という話も出てきます。彼らにとって離職率は、単なる指標ではなく「自分が続けられる場所かどうか」の代理指標になっているのです。

また、成長意欲の高い学生ほど「即戦力として期待される環境に、自分がついていけなかったらどうしよう」という不安を抱えています。基礎から学べる体制が整っているかを重視して志望先を絞り直す学生もいます。裏を返せば、育て方の見通しを具体的に語れる企業は、それだけで安心材料を渡せるということです。

ここで大切なのは、良い数字や良い面だけを見せないことです。飾った情報で入社してもらっても、期待の層でズレが生まれるだけです。どんな仕事が待っていて、どこが大変で、誰が支えるのか。正直に伝えることが、結果として早期離職を減らす方向に働きます。

よくある質問

Q1. 新卒の早期離職率は、どのくらいですか?
A. 厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」では、大学卒業者の就職後3年以内の離職率が3割台で推移しています。ただし業種や職種による差が大きいため、他社平均との比較より、自社でいつ・どの層の人が辞めているかを見るほうが打ち手につながります。

Q2. 早期離職を防ぐために、まず何から始めればよいですか?
A. 制度を増やす前に、原因の層を見立てることをおすすめします。条件・関係・期待・手応えのどこでつまずいているかが見えないまま施策を重ねると、労力の割に効きません。過去に辞めた方の状況を、この四つの層で振り返るところからで十分です。

Q3. 「辞めたい」と言われたら、引き止めるべきですか?
A. その時点では、すでに気持ちが固まっていることが多いものです。無理な引き止めより、理由を丁寧に聞かせてもらうほうが得るものは大きくなります。そこで聞けた話は、次の一人を守るための材料になります。引き止めは最後の手段で、本来の勝負はもっと手前にあります。

まとめ

  • 早期離職の原因は、条件・関係・期待・手応えの四つの層に切り分けると打ち手の順番が決まる
  • 入社前の期待は「書かれていない約束」として機能するため、飾らず伝え、入社後に橋渡しする
  • 辞意が固まる前に、言葉が減る・先を語らなくなる・頼らなくなるという変化が表れる
  • 気づいたら問い詰めず、見えた変化を事実として伝え、答えを急がずに聞く
  • 繰り返すなら個人ではなく受け入れの設計を見直す

新卒の早期離職を防ぐ取り組みは、派手な施策より、気づく力と初動の丁寧さに支えられています。私たちルビーインも、逆求人型イベント『ウェルハンティング』で、学生と企業が1対1でじっくり向き合い、入社後まで見据えた出会いに伴走しています。まずは、直近で辞めた方の経緯を四つの層で振り返ってみてください。自社がどこでつまずいているのかが、見えてくるはずです。