BLOG ブログ
就活生の給与の本音——聞けないまま辞退にしない、企業からの開示
学生に「給与は気にしますか」と尋ねると、多くが少し言いにくそうにしながら「気にします」と答えます。就活生の給与の本音は、企業の前ではほとんど表に出てきません。そして聞けないまま選考が進み、疑問を抱えたまま静かに離れていく——この流れは、企業側からは理由が見えないまま終わります。本記事では、学生が給与・残業・休日について聞けない構造と、企業から先に開示するときの考え方を、面談の現場から整理します。
学生は給与を気にしていないのではなく、聞けないだけ
私たちルビーインが年間5,000件の学生面談で向き合っていて感じるのは、就活の軸を「本音軸」と「建前軸」に分けて言葉にする学生が少なくない、ということです。本音軸として挙がるのは、給与、年間休日、働き方、福利厚生といった生活に直結する項目。一方の建前軸には、社会貢献や成長、人の役に立ちたいといった言葉が並びます。
そして企業に伝えられるのは、たいてい建前軸のほうです。学生自身が「これは言っていい」と判断した軸だけが選考の場に出てくる。つまり企業が聞いている志望動機は、本音の全体像ではなく、学生が編集したあとの一部だということになります。給与への関心が薄いのではありません。関心はあるのに、口に出す場所がないのです。
「聞けない」の正体——条件で選ぶ人だと思われたくない
なぜ聞けないのか。面談で背景をたどると、待遇の質問をすると条件だけで会社を選ぶ人だと思われてしまう、という感覚を多くの学生が持っていることがわかります。面接では待遇の話題を避けるのが暗黙のルールだ、という認識を持っている学生も目立ちます。評価される場である以上、マイナスになりそうな質問は自主的に取り下げる。ごく自然な判断です。
私たちの面談は合否の出ない場なので、「聞きにくいことこそ、ここで聞いてほしい」と最初に伝えています。すると、それまで一切出てこなかった質問が動き出します。実際に、聞きにくいことがない場だったから本音ベースで話せた、と振り返る学生もいます。裏を返せば、聞ける空気がない場では、疑問はそのまま持ち帰られるということです。学生の逆質問を、魅力づけと見極めの両方に活かすには、まず質問できる状態をつくるところからになります。
聞かれなかった項目は、口コミで埋められる
疑問が消えるわけではありません。企業に聞けなかった学生は、別の情報源で埋めにいきます。面談では、口コミサイトで残業時間や昇給の様子を確認した、という話が繰り返し出てきます。
印象的なのは、その確認が志望度を静かに下げていることです。口コミを見ると残業が多そうで不安になった、休みを取るときに理由を求められるらしいと知って少し怖くなった——そうした声が複数の学生から聞かれます。しかも同じ学生が、「その懸念さえなくなれば、もっと知りたい」とも言っています。まだ挽回できる段階にいるのに、確かめる手段が企業側に用意されていないのです。
企業が語らなかった領域は、企業以外の誰かが埋めます。そこで形づくられた印象は、企業には見えないまま辞退の理由になっていきます。
就活生の本音は「額」より「見通し」に向いている
もうひとつ、開示を考えるうえで押さえておきたいことがあります。学生の関心は、初任給の数字そのものより、その先どうなるかに向いている、という点です。
面談では、初任給だけが高いと逆に違和感がある、という声が聞かれます。入口の数字が良くても、その後どう上がっていくのかがわからなければ、長く働く判断材料にならないからです。評価が何で決まるのか、昇給はどんな仕組みなのか、そこが見えないと「正当に評価されるのだろうか」という不安が残ります。
残業と休日も同じ構造です。学生が気にしているのは時間数だけではありません。固定残業代に何時間分が含まれているのか、その時間を超えたらどう扱われるのか、有給休暇は実際に取れているのか。制度の名前ではなく運用の実態を知りたがっています。年間休日については、日数を具体的な数字で挙げて比較する学生が目立ちます。ここは曖昧に濁すほど不信につながる領域です。
企業から先に開示する——何を、どう伝えるか
学生から聞かれるのを待つ設計は、この構造では機能しません。企業から先に開示するほうが、結果的に話が早く進みます。
### 数字ではなく、仕組みと道筋を語る
いくら払うかを一方的に示すより、何をどう評価して、どんな道筋で処遇が変わっていくのかを説明するほうが、学生の疑問には届きます。同じ職種で数年働いた社員がどんな仕事を任され、どう評価されているのか。具体的な仕事の変化に沿って語ると、学生は自分の数年後を想像できるようになります。
### 制度の名前ではなく、運用を語る
「有給が取りやすい」「残業は少なめ」といった形容だけでは、学生はもう受け取りません。どんなときに残業が発生し、繁忙期はいつで、どのくらいの幅があるのか。休みを申請するときに何をすればいいのか。運用のレベルまで具体的に語られてはじめて、学生の頭の中の空欄が埋まります。
### 「まだ決まっていない」は、そのまま伝える
制度改定の途中で確定していない、部署によって実態が違う——そうした場合は、無理に整った答えを作らないほうが安全です。学生が敬遠するのは、条件が良くないことより、あいまいなまま濁されることです。今わかっていることと、まだ決まっていないことを分けて伝える。その正直さのほうが、結果的に信頼につながります。
「条件で選ぶ学生」ばかり集まるのでは、という心配
先に開示すると条件目当ての学生が増えるのではないか、という懸念はよく耳にします。ただ面談の実感としては、条件は入口の絞り込みには使われても、最終的な決め手は人や仕事の中身に移っていく学生が目立ちます。決め手を語ってもらうと、待遇と並んで「人の雰囲気」「未来が見えるか」が挙がることが多いのです。
条件を先に開示すると、条件が合わない学生は早い段階で離れていきます。残った学生とは、そのぶん中身の話に時間を使えます。これは辞退が減るという意味ではなく、辞退が起きる位置が前に移るということです。選考の終盤で条件が理由の辞退が続いているなら、開示の順番を見直す価値があります。給与や待遇を気にする学生の本音を打算と受け取らないことが、その出発点になります。
よくある質問
Q1. 学生から給与について質問されたら、印象は下がりますか?
A. 質問すること自体は、生活を現実的に考えている証拠です。面談では、条件を確認したうえで人や仕事内容で決めていく学生が目立ちます。印象を下げるかどうかより、その質問の背景にある不安(長く働けるか、生活が成り立つか)を聞き返すほうが、相互理解につながります。
Q2. 給与や待遇の話は、選考のどの段階で伝えるのが良いですか?
A. 学生が自力で確かめられない情報ほど、早い段階で企業から出すほうが齟齬が減ります。募集要項に書ける事実は最初から示し、評価や昇給の考え方は面談や説明会で補う。終盤まで伏せておくと、学生は口コミなど別の情報源で埋めてしまいます。
Q3. 待遇面で他社に見劣りする場合、どう伝えればいいですか?
A. 数字を良く見せる工夫より、その数字がどう変わっていくのかと、待遇以外に提供できるものを具体的に語るほうが伝わります。面談では、条件の一項目だけで判断せず全体の組み合わせで比べる学生も目立ちます。見劣りする点を隠すと、入社後の不信につながりやすくなります。
まとめ
- 学生は給与に関心がないのではなく、評価される場では聞けないだけ
- 企業が語らなかった領域は、口コミなど別の情報源で埋められ、志望度が静かに下がる
- 学生が知りたいのは金額そのものより、昇給・評価・残業・休日の「運用と見通し」
- 聞かれるのを待たず、企業から先に開示する。決まっていないことは決まっていないと伝える
給与や残業の話は、企業にとっても切り出しにくいテーマです。それでも、学生が聞けない以上、口を開くのは企業の側になります。私たちルビーインは、逆求人型イベント『ウェルハンティング』の運営を通じて年間5,000件の学生面談を重ねるなかで、企業には届かないまま持ち帰られる疑問に日々触れています。まずは直近の辞退者が、待遇について何を確かめられないまま去ったのかを振り返るところから始めてみてください。
-
関連記事
-
学生が見ている「社員の雰囲気」——面談・説明会の何気ない場面
「雰囲気が良かったので志望度が上がりました」——学生からこう言われて、具体的に何...
-
転勤を学生が敬遠する理由——不安の正体は「見通しが立たない」こと
「転勤ありと書いた途端に応募が減る」——採用の打ち合わせで、こうした声をよく聞き...
-
圧迫面接のつもりがなくても——学生が「圧迫」と感じる瞬間
圧迫面接をしている自覚のある企業は、いまではほとんどないはずです。それでも学生の...
-
Z世代の就活生の特徴とは——年5,000件の面談で聞く声と、決めつけない向き合い方
「Z世代の就活生の特徴」を調べる採用担当者が本当に知りたいのは、今の学生にどう伝...
-
受け身に見える学生の内側——主体性を引き出す関わり方
面談で受け答えが少なく、「受け身だな」「主体性が感じられない」と映る学生がいます...
-
