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内定者研修は何をやるか——目的で変わる中身と、やりすぎない線引き

ルビーイン株式会社『ウェルハンティング』編集部

入社前の内定者たちが社員と一緒に和やかに学び、話し合っている様子

内定者研修は、「やったほうがいい」とは分かっていても、何をどこまでやるかで迷いやすい施策です。目的を決めないまま内容を積み上げると、内定者の負担ばかりが増え、かえって入社への不安を強めてしまうこともあります。この記事では、内定者研修を「辞退を防ぐため」に置くのか「入社後の立ち上がりを支えるため」に置くのかという分岐から、目的別の中身の決め方、やりすぎない線引きまでを、私たちルビーインが現場で見聞きしてきたことをもとに整理します。

内定者研修は「内定者フォロー」と分けて設計する

はじめに整理しておきたいのが、内定者フォローとの違いです。フォローは、入社までの期間に接点を保ち、気持ちが離れないようにする関わり全般を指します。一方の内定者研修は、時間を取って何かを学んでもらう・体験してもらうプログラムです。目的も、内定者にかかる負担も違います。

この二つを混ぜたまま「とりあえず月に一度集めよう」と決めてしまうと、何のために集まるのかが曖昧な会になりがちです。接点づくりは接点づくりとして設計し、研修は研修として目的を決める。順番としては、まずフォローの設計を先に置き、そのうえで「研修という形でしか渡せないものは何か」を考えるほうが無理がありません。接点そのものの設計については内定者フォローで辞退を防ぐ——入社までの接点と、内定者コミュニティの設計で詳しく扱っています。

目的は「辞退を防ぐ」か「立ち上がりを支える」か、どちらかに寄せる

内定者研修の目的として挙げられるものは、不安の解消、辞退の防止、社会人としての意識づけ、基礎スキルの習得と、いくつもあります。ただ、これを全部並べると、内容も全部盛りになります。

実務では、大きく二つのどちらに軸足を置くかを決めたほうが設計しやすくなります。ひとつは、入社までの迷いを減らす「辞退防止」。もうひとつは、入社後に立ち上がりやすくする「立ち上がり支援」。この二つは、渡すものも、かける時間も、望ましい雰囲気も違います。どちらも大事だからと折衷にすると、迷いを減らすには浅く、立ち上がりを支えるには足りない、という中途半端な結果になりやすいところです。

「辞退を防ぐ」なら、教えるより見通しと関係を渡す

辞退につながる迷いは、多くの場合、知識の不足ではなく見通しの不足から生まれます。最近の面談でも、内定をもらったあとの面談で働き方の実態を知り、「本当にここでいいのか」と揺れ始めたという学生の声を複数聞きます。入社前に知りたいのは、ビジネスマナーの型よりも、自分がどこに配属され、1年目に何をして、隣にどんな人がいるのか、という具体です。

この目的なら、プログラムは軽くて構いません。現場社員との座談会、1年目社員が一日の流れを話す会、職場の見学、配属の考え方の説明。学ぶ量ではなく、疑問が減ったかどうかで組み立てます。

補足として、面談では、入社までのスケジュールを早めに共有してもらえたことが安心につながった、という趣旨の声も複数聞きます。10月に顔合わせ、年明けに事前学習、3月に入社前の集まり、といった予定表を示すこと自体が、見通しを渡す行為になっています。研修の中身を決める前に、まず日程の骨格を伝えるだけでも意味があります。

一方で、内定者どうしの交流は諸刃でもあります。集まりに参加して「思っていた社風と違う」と感じ、かえって迷いが深まったという学生の声も、複数の面談で聞いてきました。交流の場を作るなら、内定者だけを放り出すのではなく、どんな人が来るのかを事前に伝え、話す内容の枠をゆるく用意しておくほうが安全です。

「立ち上がりを支える」なら、必要になる順に並べる

もうひとつの軸足が、入社後の立ち上がりです。ここでの失敗は、教えたいことを全部前倒しすることです。入社前に詰め込んでも、使う場面が来るまでに忘れます。

決め方はシンプルで、入社後の最初の数週間に本人が困る順に並べます。使う道具の操作、社内で飛び交う言葉、扱う商材やサービスの基本。逆に、評価制度の詳細や中期の事業計画は、入社後で間に合うことが多い領域です。

打ち合わせでうかがった例では、入社前は先輩社員が数名の内定者を複数人体制で見て、入社後に一対一へ切り替えるという企業がありました。機材を早めに渡し、学習の進み具合が本人にも会社にも見える形にしているケースもあります。誰が見るのかを決めておくと、内定者側も質問しやすくなります。

業務そのものを体験してもらう内定者インターンを設ける企業もあります。ただし、実施するかどうかを決めかねている企業や、参加する人としない人でコースを分けている企業もあり、扱いは一様ではありません。業務に踏み込むほど労働としての性格が強まるため、後述の線引きとあわせて考える必要があります。

やりすぎた内定者研修は、なぜ逆効果になるのか

内定者研修が負担に変わる境目は、頻度と拘束です。ある学生は、志望している企業について気になる点を挙げるなかで、週に複数回ある内定者研修を懸念のひとつとして口にしていました。学生には卒業論文や研究、アルバイト、遠方からの移動といった事情があります。会社にとっては「月に数回」でも、本人にとっては予定が固定される時間です。

もうひとつの落とし穴が、任意という建前です。案内には「任意参加」と書きながら、参加しないと不利になりそうな空気を作ってしまえば、実質的には強制と変わりません。実務上の線引きとして、内定者研修は原則として任意参加で行い、参加を義務づけて会社の指示のもとで働かせる形になれば、労働時間として扱い賃金の支払いが必要になる場合があります。参加の可否が入社後の扱いに影響しないことを明示し、判断に迷う内容であれば、社内の法務担当や社会保険労務士に確認してから実施するのが安全です。

負担を抑える工夫としては、オンラインと対面を使い分ける、録画を残して後から追えるようにする、課題の分量に上限を決めておく、といった手があります。「参加できなかった人が取り残されない設計」があるかどうかが、任意を任意として成り立たせます。

時期と回数は、目的から必要最小限で決める

実施時期は、内定式のある10月以降から入社直前の3月までに置く企業が多くみられます。ただ、この期間を埋めることが目的ではありません。決め方としては、目的に対して最低限必要な回数から始め、足りなければ足す、という順序をおすすめします。

回数を増やすより、1回の意味を濃くするほうが負担対効果は高くなります。目的が辞退防止なら「入社への疑問がどれだけ減ったか」、立ち上がり支援なら「入社直後に困る項目がどれだけ減ったか」。この問いに答えられない回は、削る候補です。

やりっぱなしにせず、入社後まで見て判断する

内定者研修の良し悪しは、実施した時点では判断できません。辞退が起きたかどうかだけでなく、入社後の数か月で本人がどう立ち上がったかまで見て、はじめて中身を評価できます。

見るポイントは多くありません。内定者から出た質問がどう変わったか、参加率と欠席の理由、入社後の受け入れ担当者が「これは先に伝わっていてほしかった」と感じた項目。この三つを翌年に持ち越すだけで、内容は年々絞り込まれていきます。入社後の受け入れ設計との接続は入社後の研修・オンボーディングが、定着を左右するもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q1. 内定者研修は、参加を必須にしてもよいですか?
A. 原則は任意参加で設計するのが安全です。参加を義務づけて会社の指示のもとで作業をしてもらう形になると、労働時間として扱い賃金の支払いが必要になる場合があります。参加の可否が入社後の扱いに影響しないことを、案内の時点で明示しておくとよいでしょう。判断に迷う内容は、社内の法務担当や社会保険労務士への確認をおすすめします。

Q2. 内定者研修に給与は支払う必要がありますか?
A. 内容によります。任意参加で、会社の指示のもとでの労働にあたらない範囲であれば、支払いが不要と整理されることが一般的です。一方、実務を担ってもらう内定者インターンのような形は、労働としての性格が強まります。プログラムを決める段階で、労働にあたるかどうかを社内で確認しておくと後戻りが減ります。

Q3. 内定者研修はいつから始めるのが一般的ですか?
A. 内定式を10月に行う企業が多いことから、10月以降から入社直前までの期間に置くケースが多くみられます。ただし、期間を埋めることが目的ではありません。目的に必要な回数から始め、内定者の状況を見ながら調整するほうが、負担と効果のバランスを取りやすくなります。

まとめ

  • 内定者研修は、内定者フォロー(接点づくり)と分けて設計する
  • 目的を「辞退防止」か「立ち上がり支援」のどちらかに寄せると、中身が決まる
  • 辞退防止なら見通しと関係を、立ち上がり支援なら入社後に困る順の内容を渡す
  • 頻度と拘束がやりすぎの境目。任意参加を建前で終わらせない
  • 入社後の立ち上がりまで見て、翌年の内容を絞り込む

内定者研修は、たくさんやるほど安心につながる施策ではありません。何のために時間をもらうのかを一つに決めるだけで、渡すものも、削れるものも見えてきます。私たちルビーインも、逆求人型イベント『ウェルハンティング』で学生一人ひとりと1対1で向き合うなかで、入社前の不安がどこから生まれるのかを日々うかがっています。まずは来年の内定者研修の予定表から、「これは何のための回か」を書き添えてみてください。減らせる回が、いくつか見つかるはずです。